長いくちばしと独特な模様が印象的な沖縄の鳥ヤツガシラ。愛くるしい表情で佇むムギマキ。 野生の鳥達の一瞬の表情を切り取ったこれらの作品は、聴覚に障害を持ちながらも、全国津々浦々を旅しながら野鳥の写真を撮り続ける茅ヶ崎市東海岸北にお住まいの荻原勇一さん(71歳)のものです。第二の人生として、カメラを始められた荻原さんにお話を聞かせていただきました。
荻原さんがカメラを始められたのは、勤めていた電気メーカーを定年退職されてから。当初、被写体としてお寺を撮ろうかと思っていた荻原さんですが、妻の美智子さん(65歳)が探鳥会のグループに入っていたことがきっかけで野鳥の魅力に目覚め、それからは夢中でシャッターを切り続けてきました。
北は北海道、南は奄美大島まで、そこにしかいない鳥を追いかけ、撮影旅行を重ねてきた荻原さん。なんと北海道では車で寝泊りをしながら18日間にもわたる一人旅をしたこともあるそうです。長い移動距離に加え、目当ての鳥が現れてくれるまでは寒い中二日も三日も待ち続けなければならない状況も、「鳥のためなら大丈夫」。と、笑って話してくれました。この北海道の18日間一人旅は大きな自信につながったといいます。
荻原さんの作品の中の鳥達は、呼吸が聞こえてきそうなほどその存在を近くに感じられるものばかりで、こちらを警戒するそぶりもなく素の表情を見せてくれているのが印象的。しかし、相手は野生の動物。警戒心の強い野鳥を撮るのはすごく難しそうですが?「鳥は人間の気配に敏感です。鳥との距離感を掴むことが大事なんですよ」。と荻原さん。そして機材のほうも「どうせ撮るならプロに負けないレンズが必要だ」と、大きなレンズや、暗闇でもとれるレンズをとり揃え、現在はカメラ3台、デジカメ2台を使い分けています。
先日、鳥を取り始めてから10年の区切りを記念して、荻原さんは茅ヶ崎市民ギャラリーで写真展を開かれました。今までに撮りためた作品に、ご自分で一枚一枚に撮った場所、その時の状況などの説明文をつけたり、季節ごとに額の色を変えて演出を施したこの写真展は、地域の方達をはじめ多くの方々が訪れ、大盛況に終わったといいます。中には2,3度見に来る方もいらっしゃったそう。 会場には荻原さんがパソコンで毎年製作している、自身の作品がのったカレンダーも飾られ、注目を集めました。
荻原さんは、写真のほかに、「手話サークル」に6年間通っていたり、現在も「太極拳」をやられたりと、積極的に活動をしていらっしゃいますが、その仲間や関係者も多く写真展を観に来れたり、人を呼んでくれたそうです。「地域の方達との交流は大事。仕事を引退した後も、自分の殻に閉じこもっていないで、人とのつながりを通して前向きにやってゆきたいですね」。と笑顔で話してくれました。そんな荻原さんの一番の理解者は妻の美智子さんで、「好きな事をやっているので長生きしてくれますよ」と笑います。
最後に、荻原さんにとって、鳥とは何ですか?と伺うと「生きがいです!」との答えに続き、「この人の健康の秘訣よ」という笑顔の美智子さんの言葉が続きました。
聴力に障害をもちながらも、明るく前向きに自分の好きなことを追い求める荻原さんと、それを支える美智子さん。 取材を通して、お二人から元気をもらいました。「11月には長野に行こうかと思っています」。と、荻原さん。荻原さんの撮影旅行はまだまだ続きます。