
「『えびな座』の初公演が決まりました」。先日、私の元に一通の手紙が届きました。
『えびな座』は、会長・磯田貞子さんの「地元・海老名に市民の劇団を」という想いを受け、中央公民館で開催された公民館講座をきっかけに、昨年結成された演劇サークル。今年1月号の本紙で誕生の経緯をご紹介した縁もあり、私も初公演に向け気合いの入る練習を見学に行ってきました。
前回取材に伺った時は、まさに結成直後で、メンバーも約10名ほど。普段とは違う「お腹から大きな声を出す」ことの難しさや、「演じる」ということへの気恥ずかしさもあってか、まだまだぎこちない雰囲気がありました。
しかし今回、練習を見学してビックリ!よく通る大きな声に、雰囲気たっぷりの台詞回し。みなさん、すっかり「役者」の貫禄が出ているのです。しかも、衣装や小道具などは全て手作り。照明や音響なども自分たちで行うとあって、積極的に意見を出していました。現在は メンバーも25名に増え、30代から70、80代まで、幅広い年代の方たちが 参加しています。
中でも、渋い声と穏やかな語り口で抜群の存在感を放っていたのが、最年長85歳の小川一雄さん。ご自身が演技をするのは、若い頃に少し経験があるだけだそうですが、本紙で『えびな座』のことを知り、「悩んだけれど、『当たって砕けろ』の気持ちで入ったんですよ」と話します。「この歳になると、台詞を覚えるのが大変。全部覚えたつもりでも、次の日になるとすっかり忘れてしまっている」と笑う小川さん。実は、車いすでの参加なのですが、年齢やハンデを感じさせない若々しさで、他のメンバーも「小川さんを見ていると、『負けていられない!』という気持ちになる」のだそう。
そして、劇中、小川さんと同じシーンに出演する川瀬雅子さんは、メンバーの中で最年少。しかし、「一つのものを一緒に作っているので、年齢は感じません。みなさん多才で色々なことができるので、勉強になることが多いですよ」と話して下さいました。
『えびな座』の指導をしているのは、地域の古典を「語り芝居」として公演している『遊行座』主宰の東の宮美智子さん。練習中には、台詞の言い回し、言葉の強弱、動作について、「もっと明るく!」「ちゃんとタイミング合わせて!」などなど、傍から見ているとドキッとするくらい厳しく指導が飛ぶのですが、不思議とみなさんは笑顔。どうやら、演じることの楽しさが勝っているようです。
「少し飾っているいつもの自分を捨てて、大声を出したり、思いっきり笑ったり泣いたり…、演技は今まで知らなかった自分の新しい一面に気付けるので楽しい」と話すメンバーの方たち。「怒っても怒っても笑い飛ばされてしまう」と東の宮さんは苦笑しますが、「自分から楽しんでやっている人たちなので、肝が据わっている。そのパワー全開で演じてもらえば大丈夫」と太鼓判を押していました。
初公演は、海老名市教育委員会が主催している『サマースクール』で行われます。『サマースクール』は、「夏休みの間、子どもたちの居場所を作れるように」と、様々な団体が協力して小学校で講座を開催するもの。その一環として、『えびな座』は、市内5つの小学校で、宮沢賢治作の『洞熊(ほらくま)学校を卒業した三人』を演じます。

そして今後は、地域の福祉施設やコミセンでの公演など、「地域に根ざした活動」を目指して行くそう。メンバーの方からは、「海老名を『映画の街』から『演劇の街』へ!」という声も上がり、ますます夢は広がります。
市民の手による、手作りの劇団『えびな座』。とにかく楽しそうに活動しているメンバーの方たちの笑顔が、今後の活躍を現しているようでした。(記/はな)
■取材協力/演劇サークル『えびな座』
※『えびな座』では、随時メンバー募集中です。経験・年齢は一切問いません。ご興味のある方は、046(235)1173(磯田さん)または、
090(6560)5845(落合さん)まで。